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存在の意味を見つける

夜空で最も明るい星、はっきりと聞こえますか、見上げる人、孤独とため息が私の心に

シルクがたずねた

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シルクがたずねた

「あなたのお言葉を喜んで伝えさせていただきます」ガリオンはなぜこのような複雑な言い回しができるのか、自分でもわからなかった。
 狼は天を見上げ、鼻をくんくんさせながら空気の匂いをかいだ。「狩りの時間がきたようだ」獣は言った。「おまえたちの求めるものが見つかることを祈る」
「あなた方の狩りがうまくいくよう祈ります」ガリオンもお返しに答えた。
 狼はくるりと向きを変えると、仲間たちを従え、霧のなかに音もなく消えた。
「いやはや、全体的に見てなかなか見事な応対ぶりだったぞ、ガリオン」かたわらのこんもりした藪の陰からベルガラスの声が聞こえた。

 ガリオンは少なからず驚いて、飛び上がった。「そこにいるとは知らなかったよ」
「知っているべきだったな」そう言いながら老人は闇の中から姿をあらわした。
「なぜ、かれらは知っていたんだろう」ガリオンが聞いた。「ぼくがときどき、狼になることを」
「連中にはわかるのさ。狼というのはきわめてそういったことに鼻がきくからな」
 シルクが眠っていた木の下からあらわれた。小男の足取りはおぼつかなかったが、その鼻は好奇心にうごめいていた。「いったい今のは何だったんですか」
「狼たちはかれらの縄張りで、われわれが何をしてるのか知りたかったのさ」ベルガラスが答えた。「われわれと戦う必要があるか、調べていたのだ」
「戦うだって?」ガリオンは仰天した。
「かれらの縄張りによそ者が入り込んだときは、そうするならわしなのさ。本来狼は戦いを好まない――何たってエネルギーのむだ使いだからな。だが必要とあらば、戦うのさ」
「じゃあ、いったいどうしたというんですか」。「なぜあんなふうにすんなり引き上げたんです?」
「ガリオンが連中に、われわれが単なる通りすがりの者だということを納得させたのだ」
「そいつはすごいですな」
「さあガリオン、火を起こそうじゃないか」ベルガラスが言った。「さっさと朝めしをすませて、出発しよう。マロリーまではまだ道のりは長いし、せっかくの好天をむだにしたくないからな」
 その日もおそくなって、一行は草地の端を流れるかなり大きな川のかたわらに、丸太小屋や天幕の立ちならぶ谷間に入っていった。
「毛皮商人たちだ」シルクは急ごしらえの集落を指さしながらガリオンに説明した。「ここいらの森の中で、大きな水場のあるところには、必ずこうした集落があるんだ」小男の尖った鼻がうごめき、目が輝きをおびた。「こういった小さな町では、じつにたくさんの商取引が行なわれてるのさ」
「そんなことはどうでもいい」ベルガラスが辛辣な声でいった。「おまえさんの略奪本能はしばらく抑えていてもらおう」
「そんなこと露ほども思っちゃいませんよ」
「本当かね? どこか悪いんじゃないのか」
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