とにかく今は、この男にくっついて行って少しでも情報を仕入れるのが先決だと思い、我慢することにした。その後は、何となくお互いに牽制《けんせい》し合って
纖瘦店いるかのように、とりとめのない会話に終始した。
那須塩原駅で新幹線から東北本線に乗り換えて、黒磯《くろいそ》駅で降りた。赤松が入院している救急指定病院は、そこからタクシーに乗って数分の距離だった。
やはり、赤松は重体であり、面会は謝絶とのことだった。昨日から、さんざんメディアの襲来を受けたらしく、応対に出た中年の看護婦は、いかにも胡散《うさん》臭そうに福家を見ている。だが、福家の読み通り、早苗が名刺を出して、医師であり赤松の知人であると言うと、看護婦の態度が目に見えて軟化した。
日曜にもかかわらず、赤松の担当医師は病院に詰めているという。看護婦が名刺を持っていき、二人は、しばらくがらんとした病院のロビーで待たされた。
しばらくすると、黒縁眼鏡をかけ、だらしなく白衣を引っかけた長身の男が、大股《おおまた》でやってきた。
「どうも、お忙しいところを、申し訳
高血壓中醫ありません。私、東京でホスピス医をしております、北島早苗と申します」
早苗が丁寧に頭を下げると、男は、何かに驚いているように見えるぎょろりとした目で、早苗と手に持った名刺を何度も見比べた。
「ああ。それは、どうも。脇です。赤松さんの、お知り合いだそうですね。どうぞ、お掛けください」
ロビーの長椅子を指し示しながら、ちらっと福家にも目を向ける。
「福家といいます。今日は、付き添いで」
早苗の目からすると、福家は新聞記者以外の何者っ
纖瘦店たが、幸い、脇医師はあまり関心を払わなかった。
「赤松さんはですね、『事故』以来、ずっと意識不明の重体が続いていまして、ICUに入っています」
脇医師は、長椅子に腰かけると長い脚を組んだ。
「ご家族の方は、どなたかいらっしゃってるんでしょうか?」
赤松と知り合いであるという嘘《うそ》がばれることはないだろうが、できれば、直接家族と顔を合わせるのは避けたかった。
「奥さんとお子さんたちが、昨日駆けつけてこられましたが、残念ながら面会はできませんでした。いったん川崎の自宅に戻ってから、今日の午後、また来ることになってると思います」
「それで、怪我《けが》の方は、相当重いんでしょうか?」